頭蓋骨調整を取り入れた理由

私には二人の娘がいます。すでに二人とも成人していますが、実は次女の出産時の出来事が今の頭蓋骨調整を主体とした治療スタイルに大きく関与しています。次女の出産は難産で、産道の途中で留まっている時間の長いものでした。

そして生まれてすぐに呼吸障害が判明し、すぐさま別室の保育器に入れられ酸素吸入をすることになりました。医師は羊水が肺に入った可能性もあるという説明ながら、実際のところは原因不明で退院の時期を遅らせ容態の変化を見守ることになるのです。

八日後、なんとか退院にこぎつけ自宅でようやく我が子を自分の手ではじめて抱くことが出来ました。しかし、子供の表情は何か疲れたような元気のない虚ろな表情で、しかも白眼が成人の肝臓病患者を思わせるような黄色く濁った眼をしていることに違和感を感じたのです。

赤ちゃん独特の青白いくらい透明な白い眼をしていません。また、小さな胸を小刻みに震わせ、数呼吸に何回かの割合でハッ、ハッ、ハッと短く喘ぐように苦しそうな呼吸を繰り返し、また静まり、また同じことが繰り返されるのでした。

私はすぐに産道に長く留まっていたことと頭蓋の呼吸メカニズムのことが脳裏をよぎりました。頭蓋縫合の異常によって正常に血液や酸素が脳内に運ばれていないのではないかと疑ったのです。(日本では目立つ症例は耳に入りづらいですが、米国では多数の症例報告があります。)

そして直ぐに次女の後頭部を確認すると、頭蓋の後頭骨が縫合に沿って内部に5ミリ前後めり込むように後頭骨の上縁が陥没していたのです。私だけでなく素人が触れてもわかるくらいの段差のあるへこみでした。

非常にショックを受けたと同時に、もしかしたらこの呼吸障害も頭蓋が修復すれば変化するかもしれないと思い直し、その場ですぐに操作を開始したのです。といっても新生児の頭部は柔らかく完成していませんので、直に触ることを避け硬膜が頭蓋内部と脊髄を包んで繋がっている仙骨から操作することにしました。

仙骨は頭蓋骨と繋がっている

このような考えが即座に出てきたのも、ピアーズテクニックのX-Ray分析を通じて仙骨S1-2の変位角度が蝶形後頭骨関節の変位角度と類似することを知っていたことに加え、米国のオステオパシー医師、Dr.サザーランドの理論、SOTの創始者Dr.デジョネット、CSTのDr.アプレジャーの理論に興味を持っていたためです。

しかし、実際に新生児の頭蓋骨を矯正したことなどありません。しかも当時は今のようにインターネットもありませんし、頭蓋骨調整を臨床に取り入れている治療家も日本では少数にすぎない状況ですので情報不足は否めません。そんな中での我が子へのトライです。

私は次女を抱きかかえ、右手の中指と薬指を仙骨のS1-2(仙椎1,2)付近に固定し、左の掌を後頭部を包み込むように支えながら、ゆりかごを揺らすようにゆっくりとゆっくりと、緩やかなリズムに合わせて仙骨に軽い圧を加えながら、そして緩める(屈曲と伸展)・・・これを何度も何度も繰り返し一日2〜3回行いました。このやり方が正しいかどうかの自信などありません。しかし続けようと心に決め、毎回圧の加え方や方向なども細心を払い、良くなってくれるように願いながら毎日続けたのです。

そして4日目の朝、次女はいつもより間違いなく表情がハッキリしています。少し微笑んでいるように見えます。そして彼女の眼を見たとき私たちは救われたのです!あの黄ばんで濁っていた眼が、赤ちゃん特有の透きとおった美しい眼の輝きに変わっていたのです。

突然のように起きた4日目の朝の出来事です。そしてあの苦しそうだった呼吸のリズムも変化し段々と穏やかになっているのが判かります。更にあのめり込んでいた後頭骨の上縁もいびつながらも間違いなく縫合に沿って出てきていたのです。私たちは大喜びしました。

ターニングポイント

それからの数日間も同じ操作を繰り返し呼吸が完全に安定するまで続けました。そのあと同様の症状に戻ることはなく、彼女はすくすくと成長し今に至っています。

医師の指示に従い様子を見るだけで、あのまま放置していたならどうなっていたのか・・・、自然に収まったのか・・・それとも脳に充分な酸素が運ばれず身体機能に何らかの影響が出たのか・・・それは判りません。

しかし何もせずに放置することは出来ませんでした。しかし我が子を自分の手で回復の手助けが出来たことに感謝したのです。普通なら何も出来ず時間が経過し、もし身体的問題が出たならそのとき後悔したことでしょう。

私は我が子を助けてあげられる立場にあったことを幸せに思います。頭蓋骨とその呼吸メカニズム、さらに回復の事実を実際に我が子を通じて体験したこと、そしてそれらの理論が正しいことを、この身を通じて確認できたことは、私のターニングポイントになりました。

これ以来、私の頭蓋骨調整への探究心は増すばかりでした。国内外のセミナーやワークショップに、組織や会の垣根を越えて参加し、自分の知識と技術の向上に役立てるべく吸収していったのです。

それまでの私の治療スタイルは、レントゲン分析によるピアーズテクニックを主体としており、1時間に2、3人の予約を取っていましたが、これを境に1時間に1人と人数を減らし頭蓋骨調整の時間に割り当てることにしたのです。それでもこれを行う価値があると思っています。

私にはそんな経緯があって、療法として信念をもって頭蓋骨調整を行っています。今流行りの小顔ブームや最近になって行っている集客目的の美容サロンや自称セラピスらとは根本的に考え方も手法もまったく異なります。

様々なエッセンスが取り込まれ、経験を積み重ねた集大成のアジャストメント&リリースを行っています。私が経験してきたこと、30年以上積み重ねてきたものが、きっとお役に立てる人たちがいるものと強く感じています。

そんな人たちとの出会いと喜びの瞬間を共に感じたいと願っています。

最後に、自然治癒力は本当に存在します。身体は自ら元に戻りたがっています。

アジャストメント&リリースはその力を最大限に引き出すきっかけを作ってくれる最良のものです。自分自身の内に秘めた治癒力と可能性を信じてください。

縁があったらお会いしましょう